高校生向きの大盛り釜揚げ
私が高校生のとき(昭和63年頃)、土器町の県道33号線沿いにあった「さぬきや」に部活動の前や帰りに友人とよく行っていた。店内は決してきれいではなかったが、そこの釜揚げうどんは絶品だった。しかも普通の量で他の店の2玉くらいはある大盛りで、当時の価格は280円(後に350円になったが)で食べ盛りの我々にはまさしくもってこいの店であった。
つけ出汁は大きな徳利に入って出てきた。自分で入れるスタイルで、何回も自由におかわりができた。うどんの量からして、途中で出汁が薄くなり、いつもつぎ足していた。おでんも人気があり、私は行くと必ずのように豆腐と卵を取り、濃厚な味噌をつけて釜揚げが出てくるまでの空腹をしのいでいた。おでんも1本90円くらいだったので釜揚げとおでん2本で500円あれば十分であった。
この店にはうどん定食というメニューがあり、かけうどんとごはん、揚げ物1品、小鉢がついて650円くらいだったと思う。ちょっとした料理のようにも思える豪華さであった。しかも、非常にリーズナブルでうどんと定食が同時に味わえるとあって、少しお金に余裕のある時は定食を注文していた。
珍しく食べ残し
部活動のサッカーの練習がきつくてあまりにも空腹になり、思い切って釜揚げの大を注文したことがあった。すると、普通のお店では3玉以上はあるかと思われるほどのうどんが木の桶で出てきて思わず声をあげてしまった。食べ盛りの年ごろではあったが食べきるのに精いっぱいで、食べきれずに他の人に食べてもらっていた友人もいたことを思い出す。注文した食べ物を残したというのは、人生でも数えるほどしか経験がない。それほど「さぬきや」の盛りは素晴らしかったということである。
その後、広島の大学に進学して、しばらく讃岐うどんから遠ざかっていた。帰省したときはよく通っていたが、久しぶりに食べるうまさは格別だった。しかし、今はお店が火事で焼失し店をたたんでしまったのが悔やまれる。お店の前の道を通ると、今でもあの大盛りのうどんと高校時代を思い出す。