タバコ屋のうどん
丸亀城の北にある山北町の伯母さんが、私が小学生の時やきに昭和30年くらいに庄野商店ってタバコ屋をやってて、その店内で来たお客さんにうどんを食べさせていたわ。名前は庄野イワエさん。いつごろまでしよったんかな? 私の母ちゃんが昭和54年に亡くなって、その時にはもう酒屋になっとったから20年間くらいタバコ屋でうどん売っとったんかな。
おばさんがタバコ売る合間にうどん玉と出汁を作ってたんやけど、その出汁がめちゃくちゃおいしかったんや。いりこ出汁でいりこを一日つけとったんかなあ。特にこだわりも感じんかったけど、とにかくおいしい出汁やった。もちろんメニューなんかはないわ。今みたいなトッピングや何もないで。うどんと出汁だけでネギもなかったわ。うどん屋みたいにお客に食べさせるためではなかったけど、自分が食べる分と、人が来たときに食べさせるために出汁を炊いとったくらいかなあ。
今みたいにうどんを食べに行くやいう状況やなかったきんな。昔やから小麦を持って行ってうどん玉と出汁をもらう人もおった。物々交換みたいなもんや。そんで、交換しに来た人がその場で食べて帰ることがあった。その出汁がおいしかったきん。店のすみっこに2つ3つ椅子があって、そこに座って食べよったわ。たまに遊びに来る神戸のいとこは、その店の丼の裏が汚いって顔しかめよったけど、うどんのおいしさは知っているから、自分でうどんばち洗って食べよったわ。
今のうどんの専門店は、どこもだいたいうまいんやけど、庄野商店のうどんみたいにおいしい出汁にはなかなかお目にかかれんな。めったにうまいもんも食べられん時代やったきん、よっぽど印象が強いんやろうけど。