御当屋の家で、うどんを食べながら集落の話し合い
家は農家。周りもみんな農家で、集落の色んなことを話し合って決める集まりがしょっちゅうあってな。「御当屋(おとや)」と呼ばれる世話人の家でするんやけど、そんな時は必ず、うどんを作って食べた。しっぽくうどんや、かけうどんなんかを。今から思えば、うどんを食べるために集まっとったんかも知れんけど、昔は飲食店もなかったし、今みたいに娯楽もなかったから、それが楽しみの一つやった。
毎年、春と秋に土地の神さんに豊作をお願いする「地鎮さん」という行事の時も、集落のみんなでうどんを食べた。お宮さんの横に「地鎮さん」があって、そこに海のもんと山のもんを祀ってな。昆布とか、するめとか、なすび、きゅうり、お酒なんかを。うどんは祀らんかったけど、みんなで一緒に作って食べたで。
精米店で小麦の製粉もしてくれた
うどん粉は店で手に入れた。小麦を持って行くと粉にしてくれる店が、昔は集落ごとにあって。小麦だけやのうて、お米も踏んでくれたし、団子を作る時の粉にもしてくれた。もちろん、作業してもらうためのお金は要ったけど。今では村の集まりも店も、すっかりなくなってしもうたな。
●編集部より…当プロジェクトの証言の中で初めて出てきました「御当屋(おとや)」という言葉。「頭屋(とうや)」と書くのが正式だそうですが、神道用語で「神社のいろんな行事の時に氏子の中から選ばれて世話をする人」のことだそうです。あと、地鎮さんに干物や野菜やお酒や何でも祀るのに、うどんだけは祀らなかったって。ライターの皆さん、機会があれば、いろんな年配の方からぜひ謎の解明証言を。