香川県民のさぬきうどんの記憶を徹底収集 さぬきうどん 昭和の証言

小豆島町池田・昭和22年生まれの男性の証言

小豆島の「こびきうどん」

(取材・文:

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  • vol: 262
  • 2018.01.04

島四国のお遍路さんにお接待

 毎年1月21日は島四国88カ所の霊場開き。お遍路さんがフェリーに乗って小豆島にやって来始める日です。昭和30年代は、春のお彼岸になると、一日中途切れることなくお遍路さんが訪れ、島中に鈴の音が響きお寺の鐘も鳴りっぱなしでした。お寺でも、うどんやぜんざいを接待していました。お遍路さんは参る寺々でうどんをいただいていたと思いますが、みんなおいしそうに食べてくれていたことを覚えています。霊場間の歩きが適当な腹ごなしになっていたのでしょうか。

 法事の時に檀家に招かれると、決まってうどんが出ました。「うどん食べなはれ」と、たらいうどんがふるまわれました。たらいうどんは、何人もの人が箸を突っ込むため、嫌がる人もいましたね。うどんをいただいてからお墓参りに行くのが通例でした。こんな風習も随分少なくなりました。お年寄りのいるご家庭では今も続いていますが、ご先祖の扱いをちょっと粗末にしているのではないかと気になりますね。

かつては1団体で2000人のお遍路さんも

 昭和40年代は、兵庫県の但馬や鳥取、京都北部、福知山など日本海側から大勢の遍路さんが来ていました。兵庫県の和田山には、1団体で2000人を超える大きな島四国遍路の団体がありました。しっかりした先達さんがいて、400~500人ずつに分かれて毎年お参りに来ていましたが、高齢化や先達さんがいなくなったことで、いつの間にか姿が見えなくなりました。

 島霊場88箇所は住職のいる30カ寺で守っていますが、それぞれの霊場でお遍路さんを接待していました。今でも親しいお遍路さんが来ると、うどんを出して喜ばれています。

「うどんは毎日でもいい」は香川県民だけ?!

 小豆島生まれの私は、毎日でもうどんが食べたいと思います。島の人や友人にも同じような人が多いのですが、岡山の津山から嫁いできた家内には、不思議でならないようです。家内は「塩分摂り過ぎになる」と、なかなか食べさせてはくれません。これほどうどんを食べる風習は、よその県の人から見ると、ちょっと異常なんですかね。そういえば、鳥取県のお遍路さんも「小豆島の遍路に来た時だけうどんを食べると言っていました。

こびきうどんの話

 素麺を作る途中にできる「こびきうどん」というのをご存知ですか。これをお遍路さんに接待することもあります。伸ばして作るこびきうどんは、打って作る讃岐うどんとはコシや食感が違いますが、こびきの方が好きという人もいますよ。小豆島においでるご縁がありましたら、一度食べてみてください。生麺も乾燥したものもあります。お土産店で売っているところや、メニューにあるうどん店もありますよ。小豆島ふるさと村の「手延べそうめん館」では、お昼に当日作った生のこびきうどんを食べることができますよ。

●編集部より…「こびきうどん」は、手延べ素麺と同じ製法で作る「太い素麺」みたいなものですね。うどんの定義は要するに太さだけだと言われていますから、素麺のレベルを超えた太い素麺は「うどん」というわけです。讃岐うどんの別バージョンとして、「小豆島のこびきうどん」にちょっと注目しませんか?

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