こんまい頃(昭和30年前後)は、農協で作ってもろたうどんを食べとった。農家をしよったんやけど、田んぼで小麦も作っとって、収穫したらいっつも農家に60kg預けとった。やけど、農協で粉にしてもろたら半分くらいにしかならん。その小麦粉で、うどん玉にしてもらっとったんや。
小麦粉は銀行の通帳のようなもんで管理しとった。農家の各家々にそれが渡されとって、農協で小麦粉を使うときに持って行くんや。使うた分だけ、お金を下ろすみたいに通帳から差し引かれて、ほいで使い果たしてしもうたら、また小麦を預けた。
農協には、うどん玉を作る機械があってな。機械の上から粉と塩水を入れたら、後は自動で掻き混ぜたり、こねたりして、最後に下から麺が出てくる。結構大きな機械で、動かすとガラガラゆう派手な音も立てとった。そんな風にうどん玉にしてもらうこともあったけど、小麦粉だけを農協へもらいに行くこともあった。
うどんを作る機械が置いてあったんは、農協の中の土間みたいなところ。下は土やった。色んな人が利用しとって、町の溜まり場みたいになっとった。楽しい雰囲気やったよ。
●編集部より…昭和20年代の農協にあったという、全自動(?)うどん製造機。「粉と塩水を入れたら最後に麺が出てくる」って、たぶんうどんは今よりはるかに出来が悪かったんでしょうね(笑)。