うどんとばらずしは“おごちそう”の最強セットやで
- 今でこそ「なんちゃないけん、うどんでも」いう感じやけど、子どもの頃(昭和30年頃)は法事とかお客さんが来た時とか、「何かある時」に食べるもんやったよ。庵治では普通の日にうどんを食べる、いうことがそんなになかった気がする。うどん屋さんも近所に一軒。そこからうどんとすし取ろうか、いうて。岡持ちにうどん入れて持ってきてもらうんや。
- うどんを出前?
- そうや。もうな、5つも6つも作ってから持ってくるけん、のびてしもてコシなんて全然ないんや。やわやわ。麺は細かったな。今食べたら絶対おいしいないと思うんやけど、その時はほんまにおいしかった。ダシがよかったんかな。
- ダシはやっぱりイリコの?
- いいや。かつお節と昆布。ほんで、「屋島醤油」の醤油がええんやと思うわ。「弓矢マークの屋島醤油」、まだあるんかな、あそこの醤油はほんまにおいしかったで。こないだ県庁の裏の「番丁うどん」(※)行ったらダシがものすごおいしかって、思わず「何のダシ?」いうて聞いたらかつお節と昆布やって。やっぱり、と思うたわ。私、ダシのおいしいないうどんは好かんわ。
- 庵治は漁師町ですが、イリコじゃないんですね。
- 庵治で捕れるんはイリコじゃなくてイカナゴや。あそこらへんのダシは、だいたいかつお節と昆布だったん違うかなあ。
- その特別な日に食べる出前うどんはどんな? 具は?
- どんな、いうて、ただお店に「うどん5つ」いうて電話したら、持って来てくれた。「うどん」言うたら通じるんや(笑)。具はかまぼことネギと…おあげものっとったかな。ざるとか肉うどんとか…そんなんもんメニューになかったよ。食堂みたいな店やったからね。そこにおすしもあったかなあ。夏はかき氷もあったかもしれん。
普通の日はご飯いうたら、おかずはだいたい魚や。野菜もちょっとあったけど。だけん「うどんとおすし」いうおごちそうのセットは、なんかうれしかったなあ。
- ものすごワクワクしたんですね。
- うん。私、お父さんのこと嫌いやったんやけど、時々高松の方に行く時は、途中でバス降りてお昼にうどん食べさせてくれるけん、必ずついて行っきょった。お父さんの煙たさを、うどんの魅力が上回ったんやな。
- 恐るべし、うどんの魔力。
※県庁西側の「さぬき手打うどん 番丁」のこと