さぬきうどんのメニュー、風習、出来事の謎を追う さぬきうどんの謎を追え

vol.71 新聞で見る讃岐うどん

新聞で見る平成の讃岐うどん<平成25年(2013)>

(取材・文: 記事発掘:萬谷純哉)

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  • vol: 71
  • 2023.11.20

「讃岐うどん巡り」は“高値安定”が継続中、うどん関連商品開発やプロモーションもあちこちで

 「うどん県」宣言から実質2年目に入った平成25年(2013)の讃岐うどん界は、新聞記事にはこれといった大きな出来事や動きは載っていませんでしたが、相変わらず「讃岐うどん巡り」は全国から人がたくさん押し寄せて“高値安定”状態が継続中。それを受けて店や企業や団体等も、「うどん」をネタにいろいろと商品開発やプロモーションをやっているようです。

 では、この年の新聞に載った讃岐うどん関連記事を拾っていきましょう。

台湾の「さぬき」商標問題が“全面勝訴”

 平成20年に台湾の大手冷凍食品メーカー「南僑化学工業」が起こした「さぬき」という言葉の商標登録問題が、5年経ってようやく“全面勝訴”という形で解決しました。

(8月31日)

「讃岐」商標すべて無効 知的財産局 台湾企業の敗訴確定

 台湾企業が「讃岐」や「SANUKI」など計14件の商標を登録していた問題で、企業側が登録していたすべての商標の無効が確定したことが30日、県などへの取材で分かった。確定に伴い、現地のうどん店の店名や商品名に「讃岐」を使えるようになるという。

 同問題では、台北市で讃岐うどん店を経営する樺島泰貴さんが2008年に、台湾企業の商標登録を認めた知的財産局に商標無効を求める審判を請求。14件のうち、食品名として企業が登録していた4件は昨年5月までに無効が確定していた。県や樺島さんによると、店名などに関する10件の商標についても知的財産局が無効判断を示した。企業側は不服申立てを行ったが認められず、期限内に上訴しなかったため、今月30日までに無効が確定した。樺島さんは「待ちに待った結果。日本の有名な地名が一企業に独占されるのは不公平だと訴えてきた。秋までには店の看板に『讃岐』を掲げ、台湾で讃岐うどんのおいしさを広めていきたい」と話している。

 5年にわたって裁判で争われたこの商標登録問題は「日本の常識は世界ではなかなか通用しない」という話の典型例の一つですが、とりあえずよい方向で結審となりました。ただし、これが台湾より“反日感情”の強い中国や韓国だったら結果が違ってきたかもしれない…と考えると、ビジネスの海外進出は大小を問わず、企業も行政も心してかからねばならないことを思い知らされた騒動でした。

大分で「おんせん県」騒動が

 商標登録つながりでもう一件、香川の「うどん県」宣言に倣って大分県が「おんせん県」を宣言して商標登録を申請しました。ところが、全国の温泉地から批判が相次いで…

(1月7日)

「うどん県」に続け…大分「おんせん県」波紋 商標申請に批判相次ぐ

 別府や湯布院など有名温泉地のある大分県が「おんせん県」の名称の商標登録を特許庁に申請した。「うどん県」を登録した香川県を手本に観光PRをねらったが、同じく温泉が豊富な群馬県は「他県は温泉県を名乗れなくなるのか」と反発。全国から批判が相次ぎ、釈明に追われる事態になっている。

 大分県は温泉の源泉数が約4500、1分あたりの湧出量が約290リットルあり、それぞれ日本一を誇る。県は昨夏から「日本一のおんせん県おおいた」をキャッチフレーズに観光振興を図ってきたが、特に宿泊、入浴、娯楽施設や旅行、菓子の宣伝に「おんせん県」の名称を使おうと、昨年10月に登録申請した。可否は早ければ3月にも決まる見通し。

 商標登録されれば、大分県は他の自治体や民間による使用を差し止められる。だが、温泉地の数は北海道が最も多く、ポンプなどの動力を使わない自然湧出量では群馬県の草津温泉が首位に立つなど、どこが本当に日本一なのかは決めにくい。群馬県は観光パンフレットなどでかねて「温泉県」を名乗っており、「大分に許可をもらう形にはしたくない」と反発。登録申請がテレビなどで取り上げられた後、大分県には全国から「日本中に温泉があるのに独占するのか」などとの批判が数十件届いた。

 香川県も「映画をきっかけにうどんブームが巻き起こるなど、前置きがあった香川とは状況が違う。他県もイメージできる『おんせん県』は難しい面がある」と指摘する。予想外の反響に、大分県は「第三者に営利目的で登録されるのを防ぐのが目的で、他県の使用を妨げる意図は一切ない」との釈明をホームページに載せた他、全都道府県に同趣旨の文書を送った。事態の収拾に追われる観光・地域振興課は「どこが一番かではなく、温泉が売りの県で一緒に名称を使って盛り上げて行きたい」としている。

 
 台湾の「さぬき」商標登録問題は、商標登録した台湾企業が樺島さんの経営するうどん店に「“さぬき”の看板を下ろせ」と言ってきたのが発端なので明らかに「囲い込み」が目的ですが、大分は「他県の使用を妨げる意図は一切ない」とのこと。ということは、「他県との差別化があいまいな大きなくくりの言葉(おんせん)を商標登録したらどうなるか」という常識的な想像力がなかったという話でしょう。

 ちなみに記事中、県が「映画をきっかけにうどんブームが起こる」という“間違った歴史”を語っています。記者が曲解して書いたのかもしれませんが、いずれにしろこの頃、讃岐うどんブームの発端がだんだん忘れられてきて、人それぞれの思い込みによる妙なストーリーが出て来始めました。

 そして騒動の後、大分県は「おんせん県おおいた」と変更して再度申請し、商標登録が認められたようです。

(10月8日)

「おんせん県」商標登録OK 末尾に「おおいた」付け再申請

 「おんせん県」の商標登録が認められず、有名温泉地を抱える他県から批判を受けた大分県は7日、末尾に「おおいた」を付けて再度申請した結果、特許庁から登録を認める通知を受けたと明らかにした。風呂桶から「OITA」の文字を模した煙が立ちのぼるマークの登録も認められる見通しで、登録料の納付後、正式に認可されるという。

 大分県は昨年10月に商標登録を申請したが、群馬県などから批判が相次ぎ、「他地域の使用を妨げる意図はない」などと釈明に追われた。特許庁は今年5月、「多くの温泉がある県という程度の意味しかなく、他県でも使っていた」として却下したが、県はその後も名称やマークをCMで使用するなど、PRに活用した。

 新たに登録される「おんせん県おおいた」の名称やマークは、既に県に事前申請した企業などの名刺や菓子箱など145件で使われている。県観光・地域振興課の渡辺主幹は「あきらめが悪いわけではなく、専門家のアドバイスを受けて第三者による営利目的の登録を防ぐ意味で申請した。(騒動で)皆さんに知ってもらうよい機会になった」と話している。

 記事によると、「おんせん県」は商標登録が却下され(当たり前です)、「県はその後も名称やマークをCMで使用するなど、PRに活用した」そうで、その後、新たに「おんせん県おおいた」として再申請して登録が認可されたとのこと。「あきらめが悪いわけではなく、専門家のアドバイスを受けて第三者による営利目的の登録を防ぐ意味で申請した。(騒動で)皆さんに知ってもらうよい機会になった」というコメントが載っていましたが、何だか“炎上商法”みたいな結果論になりました(笑)。いずれにしろ、「うどん県」に始まって「骨付鳥市」、「いりこだ市」、「おんせん県」、そして岡山市も「桃太郎市」を名乗るなどした行政の“悪ノリシリーズ”は、とりあえずこのあたりで一段落です。
 

ゴールデンウィークの人気店はますます大盛況

 ゴールデンウィークの人気うどん店の様子が、短くレポートされていました。

(5月4日)

GW後半、県内に人並みどっと

(前略)…有名うどん店では、早朝から本場の味を求める県外客らの長い列ができた。山越(綾川町)は午前7時前に約100メートルの行列ができたため、予定より1時間以上繰り上げて開店。駐車場には県外ナンバーの車がずらりと並び、中には夜中に来店したグループも。午後3時半の閉店までに2800人超が訪れた。

 日の出製麺所(坂出市富士見町)では開店時間を早めたものの、行列が途切れることはなく、2時間半で普段の休日の2.5倍程度となる約1700玉を完売。代表の三好修さん(48)は「『1000円高速』の終了以降もリピーターが多く訪れており、客足の衰えは感じない」と述べた。

 がもう(同市加茂町)でも県外からの客が大勢押し寄せる盛況ぶり。東京から車で来たという会社員山田裕之さん(35)は「各店の味比べが楽しみ」と笑顔を見せながらも、「本四道路の通行料金がもっと下がれば言うことなし」と話した。

 「山越」、「日の出製麺所」、「がもう」といった讃岐うどん巡りの超人気店のゴールデンウィークは、ブーム勃発の1990年代終盤から15年ぐらいずっと大にぎわいの大行列が継続中。もう「ブーム」を超えて、「大人気の日常」になっています。

県内うどん店が相次いで海外進出

 続いて、県内うどんチェーン店の海外進出の記事が出ていました。

(5月22日)

海外でも本場の味競う 県内うどんチェーン店 相次ぎアジア進出

 県内のうどんチェーン3社が今春から海外に進出する動きが相次いでいる。出店先はいずれもアジア圏。既にオープンした店舗は予想を大きく上回る盛況ぶり。成長が目覚ましく、日本食ブームも広がるアジア市場で、各社が「本場の味」で勝負する。

 国内で15店舗を展開する「たも屋」(高松市)は3月、シンガポールの大型ショッピングセンター内に海外1号店を開店。現地の家族連れや観光客らが多い日には1日500人以上訪れ、開店2カ月間の売り上げは当初予想の1.5倍に上った。昨年7月に東京のベンチャー企業が出店を提案。「たも屋」の黒川保社長も「以前からアジア市場に興味はあった」ため、フランチャイズ形式での出店を決めた。国内と同じセルフサービス方式で、「たも屋」で修業した日本人スタッフらが運営する。麺は自社で製造し、冷凍して現地まで輸送。だしも自社製で、天ぷらなどのトッピングは現地で調理する。「本場の味を紹介する」ため、味付けは現地風に変えていない。現在もオープン時からの盛り上がりは続き、座席数を当初の56席から70席に増設した。黒川社長は「課題を洗い出しながら、今後もアジア圏での出店を続ける」と力を込める。

 「こだわり麺や」のウエストフードプランニング(丸亀市)は、台湾に出店する予定。7月のオープンに向け、準備を進めている。「現地市場の活気が出店を決めた理由」と小西啓介社長。マンション1階にテナントで入り、フルサービス方式で提供する。現地の物産展にも出店しており、反応は上々という。3年間で台湾に5店舗の開店を目指す。

 さぬき麺業(高松市)の出店候補地は韓国・ソウル。今年中にオープンし、同社で修業した韓国人と、同社職人で運営する予定。カウンター内で讃岐うどんの手打ちの様子を見せ、「海外に本場の味覚を全て伝える」(香川政明社長)と意気込んでいる。

 「たも屋」は、ファストフード型大衆セルフ店。うどん店の店舗展開は、かつては本店で熟練した職人を育てて1店舗ずつ支店を出すという形でしたが、2000年頃から「工場や本店から麺生地や麺線を送り込む」というシステムが本格稼働し始めて以来、必ずしも熟練したうどん職人を必要としないことで、ビジネスマインドを持った経営者がこのスタイルで一気に多店舗展開を実現してきました。一方、「こだわり麺や」はフルサービス店、「さぬき麺業」は記事からは店舗形態がわかりませんが、「職人が手打ちの様子を見せる」というスタイルのようで、みなさんいろいろ工夫して海外出店しているようです。

県内うどん店が県外のイオンモールに相次いでテナント出店

 続いて、讃岐うどん店の県外へのテナント出店の記事が2本。

(11月28日)

うどん店「竹清」関東進出 千葉のイオン、県外2店目

 うどん店の「竹清」(高松市亀岡町)は、イオンが千葉市に建設している大型商業施設のフードコートに出店する。県外店舗は岡山県倉敷市の大型商業施設内に次いで2店目で、フードコートは初。本店同様、揚げたての天ぷらを提供する。営業開始は12月16日。…(中略)…竹清の調理場は約30平方メートル。本店で修業した職人2人が中心となって営業する。天ぷらは注文を受けてから揚げるスタイルで、半熟タマゴ、ちくわ、いかげそなどの定番を中心に10品程度をそろえる予定。…(以下略)

(12月13日)

「さぬき麺市場」が千葉と埼玉のイオンモールに出店

 セルフうどん店「さぬき麺市場」を経営する「あっとん」(多度津町)は、20日オープンする千葉市の大型商業施設「イオンモール幕張新都心」のフードコートに新店舗を出店する。同社の県外進出は三重県の路面店に次いで2店舗目。同社は23日、埼玉県の「イオンモール羽生」にもオープンする。

 いずれもイオンのテナントとして出店。この頃、イオンをはじめいくつかの企業が讃岐うどん店の出店を積極的にプロモーションしていたようです。
 

「さぬきの夢2000」から「さぬきの夢2009」に全面切り替え

 「さぬきの夢2000」が「さぬきの夢2009」に全面的に切り替わりました。

(6月12日)

「さぬきの夢2000」→「2009」 県産小麦、全量切り替え うどん店で需要堅調

 県内で生産される小麦が2013年からすべて、県がうどん用に開発した「さぬきの夢2009」になった。県や県農協が10年から進めてきた「さぬきの夢2000」からの切り替えが完了した。13年産の作付面積は1440ヘクタールだが、県や県農協はうどん店での需要が高いことを踏まえ、15年には2009の作付面積を現在の1.7倍に拡大するよう目指している。

 さぬきの夢2009は、2000の後継品種として09年10月に選定。2000に比べ、収穫量が約1割多く、製麺時の扱いやすさや食感に優れるとされる。県や県農協によると、2000は01年から収穫されるようになり、08年には作付面積が1590ヘクタールまで拡大。しかし、製麺業者などの要望を踏まえ、10年産から2000の「弱点」を改良した2009へ切り替え始め、作付面積は10年産23ヘクタール、11年産116ヘクタール、12年産725ヘクタールと増えてきた。…(以下略)

 平成13年(2001)から収獲が始まった「さぬきの夢2000」は、出た時は「悲願達成!」とか「「食味抜群!」とか絶賛されたのですが、すぐに扱いにくさが発覚して評判を落とし、平成16年(2004)には県農協の不正表示事件で騒動を起こし(「平成16年」参照)、後継品種の「さぬきの夢2009」が出た時には業界の重鎮から「夢2000は釜を混ぜられないくらい切れやすかった」と酷評されたりして(「平成22年」参照)、あまりいいところなく、それでも9年も持って終了しました。「夢2009」につながるステップとしての意味はあったのでしょうが、やはりちょっと“見切り発車”だったようです。

うどんの新メニューや関連商品の記事が4本

 うどん店やうどん関連企業が継続的に新メニューや新商品を繰り出している中、以下の4つが新聞記事になっていました。まず、高松駅弁が「讃岐うどん弁当」を発売開始。

(1月16日)

讃岐うどん弁当いかが 高松駅弁発売へ 巻きずしなどセット

 讃岐うどんがついに駅弁に。JR四国グループの高松駅弁(高松市)は、肉うどんと巻きずしなどをセットにした「讃岐産肉うどん弁当 がいな」を17日から発売する。加熱式容器を採用し、あつあつの肉うどんが弁当で楽しめる。

 讃岐うどんが駅弁メニューに登場するのは同社では初めて。容器の下部に生石灰と水が入った袋を内蔵し、ひもを引っぱると生石灰と水が化学反応して熱い蒸気を発する仕組み。どんぶりが温まると、ゼラチン状に固めただしが溶け、麺や讃岐夢豚の煮付けなどと絡まり、出来たてのおいしさを味わえる。弁当は二段式で、うどんの上段には、讃岐うどんやえび天などを巻いた「うどん巻きずし」、タイラギ貝のヒモのつくだ煮、しょうゆ豆を詰め合わせた。価格は1200円(税込み)で、販売期間は4月末まで。

 当時、「容器の下のひもを引っぱると熱い蒸気が出て温かい弁当が食べられる」という駅弁が流行り始めましたが、さっそくそれを取り入れた温かい「うどん弁当」の登場です。

 続いて、平成22年(2010)に登場した東讃の「七宝具うどん」が、新たなプロモーションを始めました。

(3月4日)

「しっぽく」東讃名物に 町おこしグループ「さぬき七宝具うどん同麺」 豊富な具材、全国アピール

 東かがわ、さぬき両市の魅力を高めようと、両市内の有志が具だくさんの「しっぽくうどん」を名物に育てるという取り組みを始めた。グループ名は「さぬき七宝具(しっぽく)うどん同麺(どうめい)」。流行りの「B級グルメ」とはひと味違う「美級(びーきゅう)グルメ」として、東讃地域から全国へ発信する大きな野望を抱いている。

 グループは東かがわ、さぬき両市商工会や東かがわ青年会議所(JC)などに加盟する企業や事業主らで構成。同JCが奉仕活動の一環として、3年前から地域のイベントなどで振る舞っていた「しっぽくうどん」を地域活性化に生かせないかと、昨年5月に発足。一般社団法人として活動をスタートさせた。法人名「七宝具」は当て字だが、グループが推進する「しっぽくうどん」は「地産地消にこだわった7つの具材を使用する」というのがルール。

 2日には東かがわ市の「引田ひなまつり」にメンバーが出向き、無料で振る舞うPR活動を展開。テント前には長蛇の列ができた。法人の本田代表理事によると、現在商標登録を申請中で、認可されれば次の段階に進み、既存のうどん店を回って趣旨などを売り込み、メニューに加えてもらうという。県の「うどん県」プロジェクトに合わせて県外に広め、野菜の摂取不足が指摘される県民には「手軽に野菜が食べられる」と訴えるなど、県内外へのPR策は準備万端。本田代表理事は「県東部にはさまざまな魅力があるが、これといったものがないのも事実。地域ブランドとして大事に育てたい」と意欲をみなぎらせている。

 「さぬき七宝具(しっぽく)うどん同麺(どうめい)」に「美級(びーきゅう)グルメ」と、ダジャレの連発ですが、ぜひ大事に育ててください(笑)。

 続いて、「大円」の人気メニュー「安倍総理ぶっかけ」が誕生しました。

(7月6日)

安倍首相「選挙も粘り腰」 高松のうどん店で舌鼓

 「讃岐うどんはコシが強くておいしい。選挙も粘り腰で戦い抜きたい」。5日来県した安倍晋三首相は、高松市今里町1丁目の「大円」に立ち寄り、本場のぶっかけうどんに舌鼓を打った。安倍首相は、参院選の応援演説前の午後0時50分ごろ店に入り、テーブル席に座った。おかみの西井牧子さんが「安倍総理スペシャルです」と肉ぶっかけにえび天を載せた特別メニューを運んでくると、「すごいねえ。素晴らしい」と笑顔。首相は音を立ててうどんをすすり、「おいしい」と感激した様子。…(以下略) 

 「大円」の「安倍総理ぶっかけ」は、安倍総理が退任した後、「安倍元総理ぶっかけ」になりました。総理が亡くなった今も人気メニューで、店内では毎日「安倍総理2つー」とかいう声が飛び交っています(笑)。

 もう一つは、「オリーブ牛肉うどん」。

(11月7日)

オリーブ牛肉うどん登場 県内12店 消費拡大へ販売開始

 県産小麦とオリーブ牛のプレミアムな肉うどんはいかが。オリーブ牛の消費拡大を図ろうと、県内のうどん店12店は6日から、県産小麦「さぬきの夢」とオリーブ牛を使用した「オリーブ牛肉うどん」の販売を始めた。期間は来年3月31日までで、価格は780~1500円。今回のオリーブ牛肉うどんは、讃岐牛・オリーブ牛振興会が県製粉製麺協同組合の会員店舗に呼び掛けて実現。各店舗がそれぞれ独自メニューを考案した。…(以下略)

 「オリーブ牛」と「さぬきの夢」を使った県主導のメニューで、それに組合が乗っかって、組合員の店で売り出されました。讃岐うどんは安いことが売りで知られていますが、「付加価値を付けて単価を上げる」という展開も店の経営的には不可欠。こうした取り組みが、少しずつユーザーの意識改革につながっていくことが期待されます。

「うどん発電」と「うどん石鹸」

 うどん周辺ビジネスも、あちこちで動いているようです。まずは、「廃棄うどんで発電をする」という事業が始まりました。

(7月31日)

廃棄麺のメタンガス利用 「うどん発電」開始 ちよだ製作所、9月にも

 産業機器メーカーの「ちよだ製作所」(高松市)は、廃棄うどんなどから電気を作る「うどん発電事業」を始める。廃棄麺を発酵させて作ったメタンガスを燃料に発電機を稼働させ、9月にも四国電力への売電を開始する。年間発電量は一般家庭約50世帯分に相当する18万キロワット時を見込む。発電プラントの販売も検討しており、年内の受注開始を目指す。

 同社は、県内の製麺会社の工場から出る廃棄うどんを原料にバイオエタノールを生産している。ただ、エタノール生産後も残りかすが出ていたため、残りかすの有効活用策としてメタンガスを使った発電事業を発案。5月に総工費約8000万円をかけ、同市香南町の自社敷地内に直径8メートル、高さ8メートルの発酵槽を備える発電プラントを建設した。…(以下略)

 廃棄うどんの再利用事業は、平成23年(2011)に県と「ちよだ製作所」が廃棄うどんからバイオエタノールを製造する取り組みを開始(「平成23年」参照)、その流れで平成24年に「うどんまるごと循環コンソーシアム」が立ち上がり、「うどんまるごと循環プロジェクト」が始まりましたが(「平成24年」参照)、さらにその流れで発電事業に発展してきました。

 そしてもう一つ、うどんのゆで汁を使った石鹸の開発が記事になっていました。

(11月8日)

ゆで汁原料に台所せっけん 東かがわの印刷会社「うどん鹸」発売

 名付けて「うどん鹸(けん)」。印刷業の「タナカ印刷」(東かがわ市)は、うどんのゆで汁を原料に使った台所用せっけん「うどん鹸」を発売した。ゆで汁のでんぷんが油汚れを落とし、ゆで汁の再利用で環境保全もアピールする。…(中略)…せっけんは、製麺所から提供を受けたゆで汁を煮詰め、水酸化ナトリウムなどと調合して製造。1個100グラムのせっけん500個を作るのに60リットルのゆで汁を活用した。…(以下略)

 商品名は、ちょっとダジャレの入った「うどん鹸(けん)」。ダジャレは日本古来の伝統文化ですが、前述の「さぬき七宝具(しっぽく)うどん同麺(どうめい)」や「美級(びーきゅう)グルメ」など、現代にも脈々と受け継がれています(笑)。ちなみに、「うどん県観光課係長」の肩書きを持つ公認キャラクターは「うどん健」。こうなれば、うどんのサービスチケット「うどん券(そのままや)」を作って、うどんを食べる犬のコンテストをして「うどん犬」を認定して、うどんで刀を作って「うどん剣」と命名して、「うどん軒」という名前のラーメン屋も作って、「うどんけん大集合」をやったらどうでしょう(笑)。

「うどん県」宣言が讃岐うどんブームの主役の座にすり替わり始める?!

 1990年代後半に「讃岐うどん巡りブーム」が勃発して15年も経つと、ブーム当初の経緯が忘れられてくるのですが、この年の新聞記事にちょっと気になる表記が出てきました。まず、郷土が生んだ著名な彫刻家・流政之先生のインタビュー記事から。

(1月31日)

連載「さぬき文化論」 彫刻家・流政之さん 「お接待」に心解ける

(前略)…
ーー今、県の「うどん県。それだけじゃない香川県」プロジェクトが功を奏し、香川の知名度もアップ。うどんだけでない魅力を発信する試みも盛んに行われている。

流 「決して豪華とは言えないうどんを広めたことは、勇気ある運動だ。おあげや天ぷら、卵をのせて、あの手この手で上等に見せる。食べる方も喜んで、今日はこの店、明日はあの店と楽しんでいる。…(以下略)」

 聞き手が「うどん県プロジェクトが功を奏して香川の知名度がアップした」と振り、それに流先生が「うどんを広めたことは勇気ある運動だ」とコメントしていますが、これは「うどん県プロジェクトがうどんを全国に広め、香川の知名度が上がった」という文脈のやりとりに見えます。確かに「うどん県」宣言は全国的に大きな話題になりましたが、讃岐うどん巡りブームは「うどん県宣言」の10年も前にピークを迎え、香川の知名度もそこで一気に上昇していたので、これはちょっと「うどん県」宣言の手柄を強調しすぎの感も(笑)。

 そしてもう一つ、「うどん店の労働環境がよろしくない」という記事の中に、「うどん県ブームでうどん店が増えた」という表記がありました。

(2月7日)

時給は口約束、早朝仕込みも割り増しなし うどん店9割で違反 パートへの認識低く

 時給は口約束。早朝の仕込みも割り増しなし。香川労働局が県内のうどん店を対象に行なった労働環境調査で、9割の店舗で労働関係法令の違反が見つかった。パートタイム労働者に対して勤務時間や賃金などを文書で明示していなかったり、割増料金を支払っていないなどの違反が目立ち、違反率は他の飲食業より高かった。違反店舗には文書で是正勧告した。同局は「うどん店では忙しい時間だけ近所の主婦にパートに来てもらうケースも多い。パート労働者にも労働関係法令が適用されることを理解してほしい」と呼び掛けている。調査は「うどん県」ブームでうどん店が増えた2011年ごろから、うどん店従業員の労働相談が増え始めたことを受け、昨年4~12月、40店舗を対象に初めて実施した。…(以下略)

 『讃岐うどん全店制覇』の経年調査によると、県内でうどん店が大きく増え始めたのは2000年から2005年にかけて。「うどん県」宣言のあった2010年代は年間の開店数がピークの半分くらいで落ち着いてきた時期なので、ちょっと事実とは違う表現になっています。

 ちなみに、先の記事で「映画をきっかけにうどんブームが起こる」という表記もあったように、この頃は「讃岐うどんブーム」の発端の経緯がかなりあやふやなことになりはじめた時期です。例えば、業界の重鎮や識者の間で「讃岐うどんブームは先人のたゆまぬ努力が生み出した」といった論調が出てきたり、県の施設内に掲示された讃岐うどんの歴史パネルにブームのピークの頃の経緯がスッポリ抜けていたり(どなたが監修されたのか知りませんが)、県内メディアが発行した本の「讃岐うどんブーム」の解説でブームの原動力となった2000年前後のタウン誌や雑誌、テレビの活動が「ブームに乗っかった活動」とされていたのもこの頃のこと。空前の讃岐うどんブームが権威のない一介のタウン誌やわけのわからない「麺通団」なる軍団や業界の表舞台に出ていなかった製麺所型うどん店から起こったことを快く思っていない“権威筋”の方々が、頃合いを見計らって「讃岐うどんブーム」を起こした主役の座を主張し始めてきたのかもしれませんが、どうなんでしょう(笑)。

うどん関連の新聞広告はさらに減少

 うどん関連広告は、前年の39本からさらに減って23本になりました。広告内容はほとんどが何らかの協賛広告で、「新聞でうどん店の広告をする」という時代はいよいよ終焉の様相を呈してきました。

<県内うどん店> 23本
【高松市】

「さぬき麺業」(高松市松並町)………4本
「愉楽家」(高松市林町)………………2本
「うどん棒」(高松市亀井町)…………1本
「松下製麺所」(高松市中野町)………1本
「天狗」(高松市小村町)………………1本 2月4日オープン
「てら屋」(高松市檀紙町)……………1本
「ヨコクラうどん」(高松市鬼無町)…1本
「北山うどん」(高松市鬼無町)………1本

【中讃】

「日の出製麺所」(坂出市富士見町)…2本
「塩がま屋」(宇多津町)………………1本
「めりけんや」(宇多津町)……………1本
「小縣家」(まんのう町)………………1本
「太郎うどん」(まんのう町)…………1本

<県内製麺会社>

「石丸製麺」(高松市香南町)…………2本
「藤井製麺」(三木町)…………………1本

<その他>

「さぬきうどん技術研修センター」……2本

(平成26年に続く)

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