「穴場讃岐うどん店」が全国メディアで取り上げられ始める
平成7年は、いきなり1月17日に発生した「阪神淡路大震災」の衝撃で始まり、香川県からも「うどんの炊き出し」をはじめとする数々のボランティア活動が被災地に向かった1年でした。そんな中、讃岐うどん業界は新聞で見る限り、特に目立った動きはありませんでしたが、平成元年の“針の穴場”の製麺所型うどん店探訪記「ゲリラうどん通ごっこ」の連載開始に端を発する「讃岐うどん巡りブーム」の胎動は7年目に入り、いよいよ全国ネットの雑誌が「穴場讃岐うどん店」を紹介し始めました。
ただし、そうした全国メディアの動きについては、知ってか知らずか、地元の新聞には全く出てきません。また、県内の若者を中心に「穴場讃岐うどん店」へ次第に人が動き始めていることについても、メディアではまだ全く触れられていません。従って、本稿は「新聞で見る讃岐うどん」ではありますが、このあたりから「新聞に載っていない讃岐うどん巡りブームの動き」と「新聞に載った讃岐うどんの話題」を並行して見ていくことにします。
全国ネットの雑誌で「製麺所型穴場うどん店」の紹介が始まる
ではまず、全国ネットメディアから。この年「讃岐うどん特集」を組んだ全国雑誌は、次の4冊です。
(5月)JAS機内誌『ARCAS』が、讃岐うどんをカラー4ページで紹介。
▶掲載店=竹清、讃岐家、中北
(9月)アメリカのSF雑誌『FANGORIA』の日本版が、単行本『恐るべきさぬきうどん』を紹介。
(10月)柴田書店の季刊誌『そば うどん』が、穴場讃岐うどん店の紹介を含む全41ページの讃岐うどん大特集を掲載。
▶掲載店=水車、いこい、さぬき麺業、かな泉、郷屋敷、山田家、谷川米穀店、山内、がもう、宮武、中村、長田、さか枝
(10月)KADOKAWAの料理雑誌『レタスクラブ』が、4ページにわたって穴場讃岐うどん店を紹介。
▶掲載店=小縣家、わら家、飯野屋、うどん棒、おか泉、大圓、かな泉、五右衛門、讃岐家、がもう、竹清、宮武
まず5月に、前年のJAL機内誌『ウインズ』に続いて、JAS機内誌『ARCAS』が讃岐うどんの4ページ特集を掲載。続いて10月に、柴田書店の季刊誌『そば うどん』とKADOKAWAの料理雑誌『レタスクラブ』が、相次いで讃岐うどん特集を掲載しました。
ちなみに、この3つの特集はいずれも、それぞれの出版社から筆者に「『恐るべきさぬきうどん』的な視点で紹介店のピックアップをお願いしたい」という依頼が来たもので、『そば うどん』の後半7店と『レタスクラブ』の全店は筆者が選んだ店です。選考基準はもちろん、製麺所型の穴場店とメニューに明らかな特徴のある“巡っておもしろい一般店”。特に「がもう、宮武、中村、谷川米穀店、山内、中北」といった製麺所型の穴場店は、おそらくここが初めての全国ネットデビューだと思います。また、大衆セルフの「竹清、さか枝」や、個性あふれる一般店の「小縣家、わら家、飯野屋、うどん棒、おか泉、大圓、五右衛門、讃岐家、長田」等も、そのほとんどがここで初めて全国ネットに大きく紹介されることになりました。いよいよ、全国的な「讃岐うどん巡りブーム」の第一歩です。
「一般店、大衆セルフ、製麺所型」の分類が登場
また、柴田書店の『そば うどん』の讃岐うどん大特集には、筆者のアナログな労作(笑)の「讃岐うどん店マップ」が掲載され、そこで香川県内のうどん店の接客スタイルを、
①フルサービスのレストラン食堂タイプの「一般店」
②ファストフード型食堂風の「大衆セルフ店」
③玉売りが本業でついでに食べさせてくれるというスタイルが発祥の「製麺所タイプ店」
の3つのカテゴリーに大きく分類しました。「讃岐うどん店の形態別分類」はここから始まり、のちにメディアの間でこの分類名が定着し、ブーム以降はさらに分類が細分化されていくことになります。
「楽しい、怪しい、おもしろい」の“恐るべきさぬきうどんテイスト”の拡散
9月にかなりマニアックな『FANGORIA』というSF雑誌の中の連載コラムで単行本『恐るべきさぬきうどん』が紹介されたのですが、その内容が「讃岐うどん巡りブーム」が起こった原因の本質を突いているので、一部再掲します。
連載コラム「誤読妄想局」第7回/『恐るべきさぬきうどん』(飯野文彦)
ある日、ファンゴリアのI元さんから、このコーナー用に…と本が届いた。“わーいグログロ本かな。それともエログロ本? エロエロ本ならもっと嬉しいなあ”と開けてみると、うどん屋の紹介本が入っているではないか。同封された手紙には“超おすすめ!”とまで書いてある。目の前が真っ暗になった。I元さんは饅頭ならぬ“うどん屋、怖い!”的な人だろうか? 本の中身うんぬんより、この本を薦めるI元さんの方が怖くなった。でも、どうしよう。読まなかったら、もっと怖いことが起こるかもしれない。よ…読もう。だが一人で読むのも、素面で読むのも怖い。行きつけの飲み屋で、読むことにした。するとすぐに目は、本に釘付けとなってしまった。何とこの本には、香川県という一地域でのみ行われている現象が、とつとつと書かれていたのである。
小雨けむる阿讃山脈の麓、仲多度郡は琴南の山奥。時刻は、午前10時45分。川べりには、数台の車が止まっていた。この辺りは四国山脈も迫る山中で、まったくといっていいほど人影のない場所だ。だが止まった車の中に、人影が見える。信号待ちか? いや信号はない。その後ろの車にも3人。その後ろの車にも、複数の人影がじっと待機していて、誰も降りてこない。ところが、10時55分。谷川の煙突から煙が上がると、それを合図にぞろぞろと車から降りて、谷川へ向かう人の列。そして彼らは一軒の民家へと、姿を消していったのである。まさか香川の山中で、ブラックメンかフリーメーソンの集会が…とドキドキする展開だ。
けれども、この谷川というのは“谷間を流れる川”のことではなく、煙突のある家の名字(つまり谷川さん)であった。しかし話は、簡単には終わらない。谷川さん家には「うどん」の看板はおろか、暖簾も出ていない。壁に張りついているのは“米”の一文字。何と谷川さんは米屋なのだが、その納屋風の民家を開けると、中がうどん屋になっていたのだ。いやはや凄い。お腹をすかせた山下清がぶらっと民家の扉を開けて、中がうどん屋だったら…と考えただけでも、その凄さがわかる。
この店だけではない。池内うどん店では“原則として丼と醤油と箸を持参しなくてはならない”とある。原則としてというのは忘れたらあるものを貸してくれるということだろうか?…(中略)…他にも“地元の警察官がたどり着くのに2カ月かかった”という店まで紹介されている。凄すぎる。感動して、このことを誰かに話したくなった。…(中略)…だが香川には本当に、こんなうどん屋さんがあるのだろうか? もしかしてフィクションでは?? しかも本書を編集したグループは「ゲリラうどん通ごっこ軍団」略して「ゲリ通」というのだ。ああ、香川県、ゲリ通、恐るべしー。
「ゲリラうどん通ごっこ」~『恐るべきさぬきうどん』は基本的に、讃岐うどんを文化や歴史や技術からアプローチする“郷土料理本”ではなく、「楽しい、怪しい、おもしろい」をコンセプトにした「人を動かす“レジャー本”」として編集したものですが、その「怪しさが生み出す楽しさ、おもしろさ」という本質を突いたコラムが初めて登場しました。文章はなかなかおふざけモードですが(笑)、それこそが『恐るべきさぬきうどん』の狙いでもありましたから、まさにツボを突いてきたコラムです。コラム掲載の経緯は、まず「ファンゴリアのI元さん」なるおそらく編集者の方が『恐るべきさぬきうどん』のおもしろさに気付き、それを「飯野さん」なるコラムニストに紹介したということですが、こういう“おもしろがられ方”と“マニアックな広がり方”が、讃岐うどん巡りブーム勃発の一つの大きな原動力になりました。
その他の全国ネットメディアの動きでは、この年、テレビ東京のグルメ番組で麺通団団長(筆者)が俳優の志垣太郎さんとうどん店を巡りました。また、NHKハイビジョン放送でも麺通団団長がゲスト出演し、讃岐うどんの怪しくもおもしろい世界を紹介するなど、この年は、これまでの「讃岐うどん=郷土料理」という扱いを超えた新しいテイストの情報発信がいよいよ全国に広がり始めた感があります。
では、そういう動きを踏まえた上で、平成7年の新聞に載った讃岐うどんの話題を拾っていきましょう。
讃岐うどんのメニュー本『さぬきうどん珠玉の109品大図鑑』が発刊
平成6年の年末に讃岐うどんの珠玉のメニューを一堂に介した『さぬきうどん珠玉の109品大図鑑』が発刊され、年が明けて四国新聞と日本経済新聞で紹介されました。まずは四国新聞の紹介記事から。
想像絶するメニューも 『さぬきうどん珠玉の大図鑑』、オールカラーで109品紹介
”針の”穴場うどん店を紹介した『恐るべきさぬきうどん』(1・2巻)の好評にこたえ、『さぬきうどん珠玉の109品大図鑑』(1100円)がホットカプセルから発行された。「早い、安い、多い」、もちろん「うまい」がうどん店の理想とか。おなじみの麺通団が県内うどん店からお勧めメニューなどをよりすぐり、オールカラーで109点を紹介している。麺、ダシ、具の素材そのものだけでなく、組み合わせでお互いを生かしあう。次々に想像を絶するメニューに出合ったという。
巻頭特集「一品」では、食べ歩いて裏付けされた23品がエッセーとともに掲載されている。「うどん店メニュー図鑑」は、評判49店のお勧めメニューをお品書きとともに収録しており、店に行ったような雰囲気が楽しめる。また「煮込みうどん味自慢」では、讃岐の打ち込みうどん、名古屋の味噌煮込みなどを紹介している。オールカラーで迫力たっぷり。うどんのおいしさが誌面から伝わってくる。A5判なので持ちやすく、食べ歩くのにも最適の一冊となっている。
『恐るべきさぬきうどん』1、2巻に続いて、今度は讃岐うどんの「メニュー本」を出版しました。一応“戦略”的には、『月刊タウン情報かがわ』に連載中の「ゲリラうどん通ごっこ」とそれを加筆再編した『恐るべきさぬきうどん』が「製麺所タイプ」の怪しくもおもしろい「店」を中心に展開しながら7年目に入ったので、「店」をやれば「メニュー」も、という情報誌のセオリーに則って「メニュー本」の出版を決定。加えて、「一般店」にスポットを当てるなら「メニュー」がかなり大きな差別化要因になるという理由で、「一般店の珠玉のメニュー」企画をやることになりました。
続いて、日本経済新聞でも『恐るべきさぬきうどん』1、2巻と『さぬきうどん珠玉のメニュー大図鑑』が紹介されました。
讃岐うどんの店指南 穴場・メニュー満載本を出版(高松)
うどん王国香川で讃岐うどん食べ歩きのバイブルとも言うべき本が3冊続けて発売され、いずれも地域のベストセラーとなって話題を呼んでいる。この本はその名も『恐るべきさぬきうどん』1、2巻と『さぬきうどん珠玉のメニュー大図鑑』。
『恐るべきさぬきうどん』は、自ら「麺通団」と名乗るうどん食べ歩きの“プロ”が、香川県に1000軒以上あるうどん屋の中から穴場中の穴場(文中では「針の穴場」と表現)を紹介する。人里離れた山の中、田んぼの中、民家の納屋の中など、常識では考えられない立地で絶品の麺を出す店が次々に登場する。『さぬきうどん珠玉のメニュー大図鑑』は、いわゆるメニュー図鑑。60の名店から100あまりの珠玉の讃岐うどんメニューを紹介する。
著者の麺通団団長は「うどん処でうどんの本とは“釈迦に説法”かとも思いましたが、考えてみるとほとんどの讃岐人が数十軒のうどん屋しか知らない。しかも元来みんなうどん好きですから大ヒットしたようです」と話す。讃岐うどんの店の形態やメニュー、食習慣についてはほとんど全国に知られていない。驚くべき店の形態の数々、一見客では理解できない数々の注文方法と食べ方、強烈な値段の安さ、そして1人年間数百玉を食べるという信じがたい讃岐人の食習慣。この本にはそんな食の現場の情報がふんだんに盛り込まれている。出版したのは、地元でタウン誌を発行する「ホットカプセル」(高松市・田尾和俊社長)。実は田尾社長自身が麺通団団長である。
日経新聞は『恐るべきさぬきうどん』と『さぬきうどん珠玉のメニュー大図鑑』の両方を合わせて紹介していますが、記事の多くが『恐るべきさぬきうどん』の方の紹介に割かれているように、やはりあの「針の穴場探訪記」のインパクトは断然大きかったようです。
「うどんを嚙む回数」と「店の回転率」に関する考察が…(笑)
続いて、四国新聞一面下コラムの「一日一言」に、岡山の観光地のうどん店の話が載っていました。
コラム「一日一言」
所用で出掛けた岡山からの帰りに観光地のうどん屋に入った。ずいぶん遅い昼だったのに、40人ほどが入る店内は満員。 天ぷらうどんを頼んで退屈しのぎに見回すと、何か妙だ。香川のうどん屋と何かが違う。満員の客のうち3分の1は、すでに箸を握っている。 残り3分の1は湯飲み茶わんを前に所在ない様子。残る3分の1の席はひたすら平らなテーブルしかない。みんなかなり待たされている。そろいのトレーナーを着た娘たちが数人で迎えるが、不慣れなアルバイトのようで客さばきが間に合わない。それでも客は特に不機嫌な様子もない。時機を失すると注文するまでに10分。箸を握るまでにさらに数十分。
鷹揚(おうよう)な人の多さに感心していると、また妙なことに気付いた。うどんをすする、あの音の間隔がえらく長い。他人の食事ぶりを盗み見するのははなはだ失礼だが、気になって仕方がない。こっそり見ていると、どうやらみんなうどんを噛んでいる…失礼ついでに回数を数えたら、一すすりで5回から10回、多い時は十数回。偏見かもしれないが、讃岐人にはうどんを「噛む」人が少ないから妙な気分だ。
当然、一人が食べ終える時間は長く、客の回転率も悪い。ちなみに天ぷらうどんが出てくるまでに25分、食べ終えるのに平均15分見当。コシのある手打ちうどんでも、伸び切るのに十分な時間だ。岡山のオフィス街でも同じなのだろうか。観光客の中に迷い込んだ讃岐人は25分待って、一すすリ3回噛みで、3分で食べ終え、700円を払って店を出た。同じコストなら早く食べてもらった方が客の回転率は上がる。日本一のうどん王国は「うどんはのど越し」と信じる讃岐人の早食いに支えられているのかもしれない。
観光地の満員のうどん店でずいぶん待たされたことから、「うどんを嚙む回数」との因果関係にまで言及しています(笑)。まあいろんな異論もあるでしょうが、「讃岐人はうどんで何でも考察できる」ということで(笑)。
震災ボランティアに「うどん」が続々と
1月17日に起こった阪神淡路大震災の直後から、讃岐うどんの炊き出しボランティアが続々と被災地に向かいました。新聞に載った“うどんボランティア”の記事を日付に沿って列挙しておきます。
うどん4000食提供へ 丸亀の慈善団体、あす神戸市に
丸亀市のボランティア団体「ねぎの会」が28日、阪神大震災で被災した神戸市を訪れ、うどん4000食を避難住民に提供する。約10人が4トントラックと乗用車に分乗して、午前4時に丸亀市を出発。同市東灘区の東灘小学校で、昼食時に温かいうどんをふるまう。
被災地(神戸市長田区)で心温まるもてなし 讃岐うどんに長い列 仲・善民主商工会一行11人、休む間もなく
被災地へ温かい讃岐うどんを。仲・善の中小企業の人たち約400人で作る民主商工会は23日、満濃町の小縣うどんから寄贈された500食を含む生うどん1500食、カップラーメン1000食、缶コーヒー、カセットコンロなどを持ち、神戸市長田区の大正筋商店街被災地を訪ねました。一行は同会の事務局長他11人。午前4時に出発し、現地に同10時ごろ到着しました。休む間もなく作るうどんの前には長い列ができ、1時間少々でなくなりました。容器や箸までが再利用のためか残りませんでした。同会では再び28日に訪神、琴平町のこんぴらうどんやその他寄贈された生うどん1500食を仲南町所有のマイクロバスを借りボランティアとともに須磨区の鷹取中、小学校区へ持って行く予定だそうです。
阪神大震災・義援だより
◆高松市一宮町の有志が29日、淡路島・一宮町で打ち込みうどんを被災者にふるまう。同じ町名が縁で4年前から交流があり、名物の炊き出しで励まそうと立ち上がった。出発を前に28日、主婦ら15人が一宮公民館前で下ごしらえに汗を流した。一宮地区地域おこし推進委員会の呼び掛けに、町内のうどん店が1000食分のうどん玉を無料提供、野菜も農家が持ち寄った。
◆丸亀市農協労組青年部は28日、うどん2000食を神戸市長田区の避難所でふるまった。
◆青年会議所香川ブロック協議会は29日、救援隊100人を神戸市に派遣。避難所でさぬきうどん1万食を炊き出しする。
阪神大震災・義援だより
◆日本青年会議所香川ブロック協議会は29日、メンバー約100人が神戸市内の避難所4カ所で、うどん1万2000食を調理して提供した。同協議会では、1日からボランティア活動も実施する。
同名のよしみでうどん接待 高松の一宮町→淡路の一宮町 被災者に1200食 救援物資も届ける
高松市一宮町の有志がこのほど、阪神大震災で被害を受けた淡路島の一宮町へ打ち込みうどんの炊き出しに行きました。…(中略)…今回、淡路島の一宮町の被災者を打ち込みうどんで励まそうと地域おこし推進委員会の有志が呼び掛け、町民の協力でわずか1日で1200食のうどん、燃料、野菜、つくだ煮50キロ、ミネラルウォーター250本、軍手500組、文具500人分が公民館に持ち込まれました。有志13人が朝6時に救援物資を積んだ4台のトラックに分乗し、被災地に駆け付けました。避難所の町役場、福祉センターなど7カ所に分かれ、昼食に讃岐の打ち込みうどんを振る舞い、被災者を励ましました。…(以下略)
讃岐うどんで元気に 被災の北淡町きょう慰問(豊中町ボランティア協)
豊中町ボランティア連絡協議会は17日、会員の主婦らが阪神大震災で大きな被害を受けた淡路島北淡町を訪ねて「うどん給食」を実施、被災者に温かい本場の讃岐うどんを振る舞う。慰問するのは、町内のボランティアグループ「タンポポの会」の約30人。テレビなどで地震の惨状を知り、復興へ向け何か手助けはできないかと、「うどん給食」を企画した。16日には会員ら約20人が豊中町農業改善センターで約700食分のうどんの下ごしらえに大わらわ。17日は大釜、ガスコンロなど調理器材とともにマイクロバスなど3台で豊中を午前6時出発。北淡町役場前で約400食のうどんを調理、被災者らに振る舞い、約300食は袋詰めにして贈る。…(以下略)
「温かさ」届けたい 県製麺組合、3回目のうどん接待 22日に神戸
阪神大震災の被災地にうどんのプレゼントを続けている県製麺事業協同組合が22日、震災以来3回目の無料接待を神戸市で行う。何よりも「温かさ」を届けようという試み。当日は有志の組合員が午前2時、フェリーで高松を出発。正午前から兵庫区中町通りの会下山小学校と水木通りの水木小学校の2カ所で、延べ2400食の打ち込みうどんを被災者に振る舞う。1月の淡路島・北淡町、2月初めの神戸市に続く第3弾。避難所では今も調理済み食品が多いことから、うどん接待は喜ばれているという。
讃岐の味と人情にうっとり 被災転入者を迎え交歓会(高松・西春日団地)
どうか元気を出して。県内の公営団地で阪神大震災の被災者を最も多く受け入れている高松市の県営住宅西春日団地・南自治会は28日、団地の集会場に被災者らを迎えて交歓会を開催。手づくりの讃岐うどんともちで被災者らをもてなした。同自治会にはこれまでに53戸、118人の被災者が転入している。…(以下略)
広がる支援の輪 阪神大震災 うどんで炊き出し 浄土真宗興正派の有志
浄土真宗興正派の有志の人たちがこのほど、阪神大震災で被災した人たちに食べてもらおうと、うどんの炊き出しボランティアを行いました。高松市前田西町の西光寺でも朝早くから野菜切りに大わらわ。この野菜は、近所の農家の人や門徒の人たちが持ち寄ったもので、西光寺保育所の保母さん、浄土真宗興正派末寺の坊守さん、近所の主婦ら10人が参加しました。高松別院でも同じ作業をし、約800食を準備、ポリ容器に入れて翌日早朝出発、神戸まで運び夕食に間に合わせたそうです。
阪神大震災 被災者の皆さん頑張って!! うどん振る舞う
(香南)
香南町ボランティア連絡協議会はこのほど阪神大震災で被害を受けた淡路島北淡町を訪ね、「打ち込みうどん」を振る舞いました。慰問したのは町内各ボランティアグループの26人。前日に約20人が香南町社会福祉センターで約700食の下ごしらえをしました。当日はマイクロバスとトラック2台で午前7時に福祉センターを出発。10時に到着し、北淡町の町民センターと朝の小学校で温かい「打ち込みうどん」を調理、被災者らに熱い「お茶」とともに振る舞いました。
(綾南)
綾歌郡ライオンズクラブと綾南町さぬきうどん研究会、藤井綾南町長ら一行26人がこのほど阪神大震災で大きな被害を受けた淡路島北淡町を訪ね、北淡町民センターや同町浅野小学校などの避難者に温かいさぬきうどんを振る舞いました。1200食分のさぬきうどんとプロパンやガスコンロなど調理器材を載せたマイクロバスなど3台が午前6時30分、町役場を出発。携帯電話で北淡町災害対策本部と連絡をとり、11時30分から約1時間半、420人に温かいうどんを調理し、食べてもらいました。公民館などの避難地13カ所にも災害対策本部を通じ400食を配り、大好評でした。
阪神大震災・義援だより
◆善通寺市ボランティア協議会のメンバー20人がこのほど、淡路島の北淡町民センターを慰問。被災者らにきつねうどん500食とポン菓子150袋を振る舞った。また同市社会福祉協議会から預かった乾麺300食も手渡した。
かつてより、うどんは「長く続く」ということから「不幸の時には出さない」という風習がありましたが、緊急時にはそんな“迷信”も吹っ飛んでしまいます。当初は「うどんを振る舞うのは現地の水をたくさん使うことになるのではないか」という声も聞きましたが、それは言わば“為にする議論”。新聞に載らなかった多くのボランティア活動も含めて、讃岐うどんの大きな“善意”が寄せられました。
2大「ドジョウうどん大会」は予定通り開催
続いて、飯山町の「おじょもまつり」の「どぜう汁大会」と長尾町の「ドジョ輪ピック」が、例年通り開催されました。
多彩な催しで盛況 飯山「おじょもまつり」 どぜう汁作り日本一へ熱戦
讃岐民話にちなんだ「第10回おじょもまつり」が1日、飯山町総合運動公園で開かれ、どぜう汁大会や子ども映画大会など多彩なイベントが繰り広げられ、家族連れなど8000人(主催者発表)で終日にぎわった。…(中略)…メーン行事の「どぜう汁大会」には、町内外から11チームが参加、会場では島根県の安来節保存会による本場の土壌すくい、上方お笑いショー、バザーなどが催された。…(以下略)
ふるさとの味競う 長尾で「ドジョ輪ピック」
長尾町のグループがドジョウ汁の味を競う「ドジョ輪ピックin長尾」が12日、同町造田で開催され、温かいふるさと料理が来場者の人気を集めた。ドジョウで町おこしを目指す造田地区コミニュティー協議会が郷土料理の継承も兼ねて2年前から行っている。大会には、昨年より4チーム多い自治会や企業グループ12団体が出場。各チームとも手打ちうどんや豆腐、油あげ、ゴボウ、みそなどの材料と50~60人分が調理できる大釜を準備、それぞれに独特の調理法で自慢の味を競った。…(中略)…ドジョウ汁は来場者にも一杯200円で即売され、湯気の立ち込める大釜の周囲は順番を待つ人であふれた。
「春(4月)の飯山、秋(11月)の長尾」が、「県下2大ドジョウうどん大会」となっていた時代です。その他、この年は寒川町の「ドジョウ汁(うどん)」の話題が3本、記事になっていました。
ドジョウ汁振る舞う お年寄りたち大喜び(寒川)
寒川町神前の新川自治会の「ドジョウ汁会」がこのほど地区の老人会の人たちを招き、ドジョウ汁を振る舞いました。ドジョウ汁の他、しっぽくうどん、釜あげなども作り、寒い時期の温かい心遣いが地元のお年寄りたちに喜ばれました。…(以下略)
心あったかドジョウ汁 地元の自治会が「真清水荘」慰問、郷土料理振る舞う(寒川)
寒川町石田の身体障害者療護施設「真清水荘」をこのほど、同町神前新川自治会の「ドジョウ汁会」のメンバー15人が訪れ、手打ちうどんを施設の人たちに振る舞いました。同会では前日から12キロのうどんを準備。昼時にドジョウ汁を出し、日頃と違った郷土色豊かなメニューが喜ばれました。…(以下略)
寒川で「味の散歩路」 郷土の味覚ずらり ドジョウ汁など接待
新鮮な季節の味覚を並べた「味の散歩路」がこのほど、寒川町の四国大川農協で催された同農協フェスティバル会場であり、農家の主婦たちがドジョウ汁などふるさと料理を来場者に接待した。接待には、同農協管内3町の主婦ら約30人が当たった。メニューの”目玉”は、地元で獲れたドジョウや秋野菜に手打ちうどんを加え、牛乳で煮込んだ栄養たっぷりのドジョウ汁。主婦ら4、5人が腕にヨリをかけた自慢の郷土料理だけに、大鍋の周囲に人垣ができるほどの人気ぶりだった。…(以下略)
「ドジョウ汁会」や、イベントでのドジョウ汁接待など、寒川町も大きな大会はないものの、ドジョウ汁(うどん)がかなり盛んだったことが窺えます。
うどん早食いイベントはまだまだ盛況
県下の「うどん早食い大会」は、丸亀お城まつりの「さぬきうどん早ぐい競争日本一決定戦」と、高松まつりの「さぬきうどん早食い大食い選手権大会」が2大大会として定着していましたが、こんぴらさんでも「うどん早食い大会」が恒例になっていたという記事が出てきました。
うどんの早食いに小学生ら50人挑戦(琴平)
金刀比羅宮の例大祭協賛行事の最後を飾る第5回うどん早食い競争(四国新聞社など後援)が11日、琴平町の高灯籠特設会場であり、小学生から大人まで約50人が、作法度外視のさまざまなうどんパフォーマンスでうどんを流し込み、会場を沸かせた。この日はウィークデーだったが、町内の小中学校は恒例の大祭休み。このため小学生の部には町内3校の自称”早食い自慢”31人も参加、級友たちの大声援を受け、うどん2玉を食べる早さを争った。…(以下略)
「第5回」とありますから、始まったのは平成3年。ということは、
●昭和59年…丸亀お城まつり「さぬきうどん早ぐい競争日本一決定戦」開始。
●昭和63年…高松まつり「さぬきうどん早食い大食い選手権大会」開始。
●平成3年…金刀比羅宮例大祭「うどん早食い競争」開始。
となり、季節では「初夏(5月)の丸亀、夏(8月)の高松、秋(10月)のこんぴら」という順番になります。あと、この年は「源平屋島まつり」(3月)と「築地ふるさとまつり」(8月)でも「うどん早食い競争」が行われていました。
坂出では「天狗汁」と「天狗うどん」
続いて、坂出の「天狗汁」と「天狗うどん」の話題。
郷土料理の秘伝披露 坂出・綾歌ふれあい祭 主婦ら180人交流(国分寺)
坂出綾歌地区ふれあい祭が3日、国分寺北部公民館で行われ、坂出市と綾歌郡6町の主婦ら約180人がそれぞれの地区を代表する郷土料理を通して交流を深めた。テーマは「ふるさと食文化を考える」。主婦らは坂出、綾歌地区を代表する大鍋料理として「天狗汁」と「どじょう汁」を披露。大釜3個に200人前を作った他、「てっぱい」や「黒豆」、モロヘイヤを使った「モロヘイヤもち」にも挑戦。郷土料理の秘伝を互いに情報交換しながら、交流を深めていた。試食・食文化スピーチでは、10種の具が入り、「テン(10)」の語呂に合わせた天狗汁の詳しいレシピなどを紹介しながら、手作りの郷土料理を楽しんだ。
坂出で「天狗まつり」幕開く ウォークに400人が参加 会場ではうどん接待
五色台・白峰山の天狗伝説で町おこしを図る「第5回坂出天狗まつり」は11日、白峰山のふもとの坂出市高屋町、松山小学校が山上の白峯寺まで往復10.9キロの「テングウォーク」を皮切りに2日間の幕を開けた。テングウォークには市内を中心に綾歌郡や高松、丸亀市などから400人近いファンが参加。午後1時、天狗太鼓を合図に松山小運動場を出発した。会場では地元婦人会がニンジン、ダイコンなど10種類の具が入った「天狗うどん」をサービス、用意した700人分がアッという間に品切れになる人気。…(以下略)
2月3日に「坂出・綾歌ふれあい祭」で主婦ら180人が「天狗汁」を大盤振る舞い、その8日後、「天狗まつり」で婦人会が「天狗うどん」を振る舞っています。新聞によると、これまで「天狗まつり」では「天狗汁」が振る舞われていて、「天狗うどん」はその一環で「町川うどん」が出していたという扱いだったのですが、この年は晴れて「天狗まつり」に出してくれました(笑)。
あと、年末にも「天狗汁」の記事がありました。
連載コラム「おふくろの味」…栄養満点の名物料理「天狗汁」
五色台・白峰の天狗伝説にちなみ始まった「坂出天狗まつり」の名物料理。今では市内外で催される各種イベントで参加者に振る舞われ、すっかり有名になった。
天狗まつりは寒さの厳しい2月に白峰のふもと、松山地区で催される。「何か体が温まるものを…」と地元の松山婦人会など主催者の面々が知恵を絞ったのが天狗汁。10種類の具を入れ、英語の10(テン)に引っかけ、「天狗汁」と名付けた。10種もの具を使うので手間がかかり、イベントの時でないとお目にかかれない。…(中略)…だしはカツオぶしとコンブでとる。具はギンナン、ニンジン、サツマ芋、シイタケ、ゴボウ、山芋、大根、レンコン、クリ、豆腐の10種類。赤みそを少量加えた白みそ仕立てで、きざみネギを振る。この汁を温めたうどん玉にかけると、「天狗うどん」になる。
「“テン具”うどん」の10種類の具のラインナップが明らかになりました。「きざみネギ」を入れたら11種類になりますが、ネギは“具”じゃないということでしょう(笑)。ちなみに、「おふくろの味」で「名物料理」とありますが、「天狗うどん」が登場したのはこの4年前の平成3年ですから、そこまでじゃないかもしれません。
滝宮天満宮で「献麺式」
滝宮天満宮の「うそかえ神事」の紹介記事中に、「境内で献麺式が行われた」とありました。
「嫌な世の中」とり替えて うそ鳥に願い託す 滝宮天満宮、開運求め恒例の神事
開運を願う恒例の「うそかえ神事」が24日、綾南町滝宮の滝宮天満宮であり、カラフルな「うそ鳥」を交換し合う約5000人の参拝者でにぎわった。うそ鳥は高さ約10センチ、直径約3センチのハゼの木製。古来から幸運をもたらす天神様の使者として親しまれている。うそかえ神事は「これまでの災いを吉に取り(鳥)替える」という意味があり、九州の大宰府や東京亀戸など各地の天満宮で行われている行事。…(中略)…また、境内では麺文化の向上と讃岐うどんの隆盛を願って町観光協会が献麺式を実施。神事のあと、参拝客らにうどん約2000食を無料接待した。
「献麺式」は、7月2日の「さぬきうどんの日」に合わせて開催されていた「さぬきうどんまつり」(四国新聞社と県生麺組合の主催)の恒例行事として、平成5年まで高松市の中野天満宮で行われていました。それが平成6年から「さぬきうどんまつり」の記事が見当たらなくなったと思っていたら、今度は綾南町観光協会が滝宮天満宮で行った献麺式が出てきました。
ちなみに、「さぬきうどんまつり」は四国新聞の広告企画の「さぬきうどんラリー」と中野天満宮での「献麺式」と県内各所での「讃岐うどん無料接待」の3本柱で行われていましたが、平成6年から新聞には高松三越前で行われる「讃岐うどん無料接待」の記事しか出てきません。
買い物客らにお接待 “ぶっかけ”1000食に大喜び(高松)
「さぬきうどんの無料接待」が2日、高松市の三越高松店前で開かれ、買い物客らは突然のもてなしに大喜びで殺到していた。県生麺事業協同組合高松支部が14年前から行っている恒例行事。田植えの終わりを告げる半夏生の日、農家の人がうどんを食べて一息ついたという風習にならい、この日を「さぬきうどんの日」に制定、接待を続けている。同支部ではこの日、冷たい「ぶっかけうどん」1000食を用意。…(以下略)
うどんの切れ端のちぢれ麺を「まいまい」と呼んでいた
「かりん亭」の名物おばさん、そして“讃岐の方言おばさん”で有名な馬場さんが紹介されていました。
“伝統の味”楽しむ 半夏生にうどん、豊作祈る(満濃・馬場さん方)
2日は夏至から数えて11日目の半夏生。讃岐地方ではこの日にうどんを食べる習慣がありますが、満濃町岸上、馬場俊江さん(57)方でも明治の頃から代々伝わった昔ながらの製法でうどんを楽しんでいます。二股の混ぜ棒、キツネいかきで打ち上げたうどんに煮干しやシイタケのだし汁、自家製の薬味をのせると、”馬場家伝統の味”になります。母から子へ、子から孫に伝えられる家庭の味。地粉を足で踏み、麺棒で延ばす作業には俊江さんの指導で3人の孫も大活躍。うどんの切れ端のちぢれ麺「まいまい」は、3人の好物となっているそうです。
農家では、田植えを終えての「足あらい」行事として、半夏生にうどんを食べ豊作を祈ります。「この日に小麦を食べると毒消しになる」との言い伝えもあり、うどんの他に手の形の付いた握り団子(半夏団子)を食べる風習も馬場さん方には伝わっています。…(以下略)
満濃家の畔の「かりん亭」に行く度に筆者に「ヤーコンうどん」を推してきていた馬場さんですが(笑)、うどんの切れ端のちぢれ麺を「まいまい」と呼んでいたそうです。高松の有名な郷土料理店「まいまい亭」の「まいまい」は語源を存じ上げませんが、馬場さんもまいまい亭も同じ郷土色豊かな人と店、何か関連があるのかもしれませんし、ないのかもしれません(笑)。
突然、うどん店の紹介記事が9本も
四国新聞に突然、うどん店の紹介記事が9本も載っていました。当時の各店の様子や歴史がわかるので、一応再掲しておきます。
まず、「八十八庵」は近年一番人気の「打ち込みうどん」ではなく、猪料理の「ぼたん鍋」がメインの紹介記事でした。
コラム「あの店この店」…イノシシ料理「八十八庵」(長尾町多和)
うまみ引き出すこだわり
四国霊場八十八番札所で結願寺の大窪寺。その門前で店を開いて30年になる。屋号は札所にちなんでいるとあって、お接待の心が味に生かされている。中でも、店自慢は冬期(11月15日~3月末)のみの季節料理「ぼたん鍋」。猪肉は、経営者の井川義明さん(68)が自ら、剣山系などの山中で射止める”本場仕込み”。「冬場の猪肉は身がしまり、脂の回りもよく、実にうまい」。猟歴50年の言葉だけに説得力がある。
仕留めた獲物はその場で解体し、においを消すため30分ほど谷水にさらす。客に出す時は昔ながらの七輪に炭火。メニューに「獲って来て 皆に食わせるぼたん鍋」の一句。料理にかける並々ならぬ心意気とこだわりが伝わってくる。脂身の肉はいくら煮ても柔らか。季節野菜、手打ちうどんなどを入れたみそ仕立て。肉のうまみがほどよくなじみ、舌も心も温まる。フルーツも付いて1人前4500円。この他、大窪寺の裏山に湧く霊水でうどんを練り、だしを取る打ち込み、ざるうどん、自家製の栗おこわ、そばなど、山里の四季の味覚が楽しめる。
続いて「郷屋敷」。姉妹店の「奥郷屋敷」は平成2年にオープンしましたが、後に閉館となりました。
“江戸庭園”に心和む 讃岐料理「郷屋敷」(牟礼町)
江戸時代、230年もの昔から代々受け継がれてきた屋敷と庭園。緩やかに流れる時間に身を任せ、味わう郷土料理が心を和ませる。五剣山の南、国道11号を越え南へ約1キロ。のどかな田園風景の中、時代を超えたようにたたずむ。近郷一円を治め、高松藩に仕えた与力の屋敷として「与力屋敷」と親しまれていた。
精粋の讃岐料理を出す料亭として生まれ変わったのは12年前。別名を「聴風看月堂」(風の声を聴き、月を看る屋敷)とも呼ばれる。すべての部屋から枯山水の庭園が見え、夜には月を望むことができる。江戸時代には諸国を旅する文化人などが訪れ、残した書や日本画が今でも飾られる。2月15日から3月15日までは、200年前から受け継がれてきた雛も特別展示する。
うどんを中心とした讃岐料理は四季折々に変化する。瀬戸の自然に恵まれた山海の美味。料理人が丹精込めて調理した一品一品に郷土の味がしみわたる。繁華街の喧騒を嫌った企業の接待にも多く利用され、週末には県外からの利用客も多い。料理は500円のうどんから会席まで多彩。昼の会席は2000円中心。夜は5000円から味わえる。三木町の奥郷屋敷は結婚式などのセレモニー中心の姉妹店。
次は「味噌煮込みうどん」で知られた庵治町の「はま一荘」。ここも後に閉店しました。
コラム「あの店この店」…民宿「はま一荘」(庵治町)
みそ煮込みうどん最高
店に足を一歩踏み入れると、壁中に張り巡らされた短冊が目に入る。常連客や宿泊客が自由に書き残した俳句や川柳、寄せ書きだ。その数、ざっと500。海の美しさとともに、料理のすばらしさなどが詠まれている。もともとは別荘だったが、平成元年に店主の馬場一市さん(64)が民宿に改装。宿泊客ばかりでなく、庵治で獲れた新鮮な魚を一般にも提供し、今では地元の石材業者らの行きつけの店としてすっかり定着している。
ここの自慢料理は、みそ煮込みうどん(1000円)。常連客のほとんどが注文する。わざわざ西讃から食べに来る人もいるほどの人気メニュー。店長自らが打ち、客の顔を見てから切るというこだわりの麺に、エビやゴボウ、豆腐、サトイモなどが入る。みそをベースにトウガラシを効かせたダシも、なかなかのものだ。旬の魚料理のほか、タイをまるごと使ったタイそうめんも、この店ならではの味。船の舵を使ったテーブルや湯のみも手作りで、店主のこだわりが伝わってくる。民宿は1泊2食付きで9000円。
続いて、長尾町のドジョウうどんの代名詞と言われた「いこい」。ここも後に閉店しました。
コラム「あの店この店」…どじょううどん「いこい」(長尾町西)
みそ仕立ての重厚な味
店内に入ると、通にはこたえられない煮込みうどんのうまそうなにおいが食欲をそそる。「うどん屋」ののれんを掲げて35年。親子二代で築いた手づくりの味が口コミでも広がり、その名は「全国区」。通に知られた「どじょううどん」(800円)は、ボリュームと新鮮さが売りもの。山陰や北海道産のドジョウを店の生簀に泳がせ、注文と同時に調理する。ドジョウの新鮮さそのままのうまさが、油揚げ、ゴボウ、ネギなどに浸透。生のまま入れた手打ちうどんにも粘り、コシがある。「注文を聞いてから炊くので20分はかかります」。注文に追われる赤松勝代さん(51)の言葉は、みそ仕立ての重厚な味で理解できた。
もう一つの目玉は「打ち込みうどん」(700円)。煮干しのだしに、旬の野菜がたっぷり。うどんの大きさが不ぞろいなのも手打ちならではだ。メニューは他に夏を乗り切るスタミナ源として真夏によく出る「どじょう鍋」があり、ドジョウを使った一品料理では、ネギ、ゴボウと一緒に炒めた「ころ入り」や好みの味付けで食べる「空揚げ」なども人気とか。
「いこい」のドジョウは山陰や北海道産だったとは驚きです。次は、東讃の「山賊村」。昭和62年に「山賊市場」という名前で四国新聞に紹介されていた、いろんなことをやってる“パラダイス”のような穴場店です(「昭和62年」参照)。
コラム「あの店この店」…手打ちうどん「山賊村」(白鳥町西山)
四季通しマツタケうどん
徳島との県境を貫く鵜の田尾トンネルから北へ1キロほど下った国道318号線沿い。地元の丸田文彦さん(42)が「恵まれた阿讃の自然を満喫しながら山の幸を存分に堪能してもらおう」とアイデアを絞っている。古い民家をそのまま利用したレトロ感覚、情緒豊かな店内。人気メニュー「マツタケうどん」は、コシの効いた手打ちうどんにマツタケがボリュームたっぷり。980円という手頃な値段で秋の味覚が年中楽しめる。うどんは全部で50種類というから驚きだ。
夏に好評なのが「流しうどん」。円形の水槽内に引き込んだ冷水の水圧で手打ちうどんがクルクル。人工のせせらぎで演出した涼しさが心にくい。20日からは屋外ビアガーデンもオープン。都会の雑踏から逃れ、のんびりした気分を味わえる新メニューだ。…(以下略)
続いて、あん餅入りの「雑煮うどん」でおなじみの「かなくま餅福田」。開業話と、早朝から打っている餅の話が入っています。
コラム「あの店この店」…「かなくま餅福田」(観音寺市流岡町)
素朴な味を守り1世紀
約100年前、観音寺から丸亀に通じる街道沿いに、餅を商う店ができた。以来「かなくま餅」の商標で知られるようになった。「かなくま」は「鹿隈」と書く。観音寺のはずれで、「当時は鹿などが出るほど草深く、七宝山と財田川が入り組んだ地形から名付けられたのでしょう」と、三代目の福田伸夫さん(46)。約20年前に脱サラ。祖母から母へと伝わった味を引き継いだ。「昔、どこの家でも作っていたような作り方で、別段変わったところはありません」。だが、モチ米は地元産、小豆は北海道産と良質の原料を使い、保存料などの添加物は一切加えない食材そのものへのこだわりが、素朴な味を守り、1世紀の間、お客さんを引き付けてきた。
伸夫さんの代になり、新たに手打ちうどんも始めた。「独学です」と謙遜。讃岐の怖い”うどん通”の舌をうならせたのか、昼時ともなると約80席の店内が満杯続きになる。主なメニューは餅(1個80円)、おはぎ(1個90円)、いなりずし(1個80円)、かけうどん(200円)など。うどんは午前10時からだが、餅は釣りに出掛ける人のために朝6時から開店している。
続いて、前年オープンした「小縣家空港店」。記事に「開店してまだ2年」とありますが、オープンは平成6年3月30日なので、開店して1年4カ月ちょっとです。ここも後に閉店しました。
コラム「味の散歩道」…「小縣家空港店」
「ひえひえうどん」人気
空港グランドホテルの向かいにある「小縣家空港店」。「元祖しょうゆうどん」が看板メニューの小縣家の3号店で、開店してまだ2年。店先に昔ながらの農具や水車を並べ、農家の納屋をイメージした店構えにしたせいか、周囲の田園風景によく溶け込んでいる。店内は木の優しさを生かした落ち着ける雰囲気。客席は、いす席、座敷を合わせて68席。そのうち、座敷32席は個室になっていて、ちょっとした宴会も開ける。
昼時は、サラリーマンやOLが高松市街からわざわざ繰り出してくるという。彼らの目当ては、やはり「しょうゆうどん」(大500円)。できたての麺にお好みでダイコンおろし、すだちなどを載せ、その上から小縣家特製の甘口しょうゆをさっとかける。単純だが、それがかえって飽きがこないそうだ。この他、人気メニュー「ひえひえうどん」(大750円)がある。空港店だけの特製メニューで、キュウリ、トマトなど旬の野菜を盛って、ざるうどんのだししょうゆで食べる。麺の上に乗った氷が涼感をそそる夏限定のメニュー。全部で約20のメニューはどれも1000円を超えるものはなく、気軽に寄れる店だ。
続いて「おか泉」は宇多津に移転する前、坂出にあった頃の紹介記事です。
コラム「あの店この店」…手打ちうどん「おか泉」(坂出市)
一玉でも出来立て出す
うどんの本場讃岐でも「これは…」という気のきいた店はそう多くない。毎日でも通う安い店、少し高くても中身のよい店と好みによって使い分けるしかない。「おか泉」は後者の代表格だ。JR坂出駅を下りて、徒歩1分ほどの絶好の位置にある。表に「本格手打ちうどんの店」と赤字に白く打ち抜いた看板を出し、数本ののぼりが立っているから、初めての人にもすぐわかる。
店主の岡田文明さん(37)は兵庫県香住町の生まれ。うどん屋になろうと香川に来て、有名なうどんチェーンに勤めたのは18歳の時。15年間うどん打ちを習い、3年前にメーンストリートの坂出駅通りに念願の店を構えた。うどん打ちのコツを習得するのに苦労しただけに、こだわりはすごい。うどん粉は一番きめの細かい上等のものを使用。客に喜ばれるよう、必ず出来立てを出す。そのため、一玉分でも小分けしてゆでる。得意はつけ麺。つるつるしたのどごしが特にうまく、弾力があってうまい。お勧めは冷たいうどんに熱々のてんぷらを乗せた「冷天おろし」(850円)。安いのは280円の「かけ」だ。
そして最後は高松ライオン通の夜の名店「こんぴらうどん」です。
コラム「味の散歩道」…「こんぴらうどん」(高松市古馬場町)
好評な「細ぎりざる」
うどんの本場、讃岐でも「これは…」という気の利いた店はそう多くない。毎日でも通う安い店、少し高くても中身のよい店と使い分けるしかない。こんぴらうどんは、後者の代表格だ。国道11号からライオン通に入って5、6軒目と絶好の位置にある。店頭に「こんぴらうどん」の看板とのぼりが数本立っており、すぐわかる。
店主の小河憲児さん(49)は、10年大阪で和食を中心に修業、うどん屋を16年間県庁裏で経営し、メーンストリートに念願の店を構えたのが6年前。「一度食べたら、また食べたくなるうどん」がモットーだけに、こだわりはすごい。うどん粉はきめ細かい上等のものを使用。だしは最高の昆布、カツオ節、干しシイタケ、少量の小魚で丁寧にとる。自慢は細ぎりざるうどん(500円)。市販の約3分の1の太さでも、つるつるしたのどごしとほどよい弾力があってうまい。しゃぶしゃぶ肉うどん(850円)もあっさり味が受けている。これからお目見えの焼き餅うどんは、奥さんの真智子さん(40)が考案した四季うどんの一つ。客のお土産うどん(3人~18人)の注文も多い。うどんの値段としては少々高価だが、食べてみれば納得する味だ。…(以下略)
こらこら! 書き出しがさっきの「おか泉」のコピペになっているじゃないか。しかも、本文の構成もほとんど同じという、ちょっと恥ずかしい“手抜き”原稿。「おか泉」の2カ月後の掲載なので気付かれないと思ったのかもしれませんが、ここで並べられてバレちゃいました(笑)。
以上、突然うどん店紹介が載り始めたのは「讃岐うどん巡りブーム」の予兆を受けてのことかと思いましたが、紹介された9店はいずれも立派な店構えの「一般店」ばかりで、『恐るべきさぬきうどん』テイストの田舎の製麺所型店は1軒もありません。筆者の感覚では、「讃岐うどん巡りブーム」の本質である「“針の穴場”のおもしろさ」に気付いて乗っかってきたのは、1990年代中盤あたりまでは山陽放送の『VOICE21』と全国ネットの「雑誌」だけでしたから、そのあたりのテイストが新聞は少し違っていたのかもしれません。
うどんを使った「交流行事」
この年も「うどん」を使った交流行事や体験教室、慰問等の記事がたくさん載っていましたので、項目だけまとめておきます。まず、うどん交流行事から。
●屋島の「四国村」の農村歌舞伎舞台で、親子15組と海外技術研修員4人を含む約50人が参加して「親子ふれあいうどん教室」が開かれる。指導は「さぬきうどん研究会」。
(8月6日)
●寒川町と姉妹連携を結んでいる北海道喜茂別町の小中学生7人が寒川町を訪れ、地元児童らと手打ちうどん作りを体験。指導は同町新川自治会の「新川どじょう汁会」。
(8月)
●綾上町の綾上国際交流会が1周年記念行事で中国からの留学生らを山田公民館に招き、「小麦粉を通した日中文化の相違点」をテーマに、「冷やしうどん」と「水餃子」をを作って“日中小麦粉料理対決”を行う。
(8月13日)
●塩江町内で開催中の「日米ヤング・アーティスト・フェスティバル」に参加している学生約30人が、同町上西の西山コミュニティーセンターで手打ちうどん作りを体験する。
うどんを使った「体験行事」
●観音寺市の常磐幼稚園で園児と父母、祖父母が大勢参加し、「うどん作り教室」を行う。
(2月)
●綾南町の羽床小学校5、6年生38人が、綾南町讃岐うどん研究会の指導で打ち込みうどん作りを行う。
(3月1日)
●土庄町大鐸小学校で、かけうどんにいろんなトッピングを並べた「うどんバイキング給食会」が行われる。
(4月)
●観音寺保育ブロックが、観音寺市植田町の中部保育所で保母60人を対象にうどん作り講習会を開く。講師は「将八うどん」の高橋正一さん。
(6月)
●仲南町の「伝承の館」で行われている「伝承塾」で、「手打ちうどん作り」をテーマに21人の児童にうどん作りを指導する。
(8月22日)
●国分寺町「愛育園」の1歳~5歳の園児が、手打ちうどん作りを体験する。指導は「ヨコクラうどん」の横倉栄雄さん。
うどんを使った「慰問、接待」
●綾歌町のボランティアグループ「碧空会」が畔田キャンプ場内の「モチの木作業所」を慰問し、しっぽくうどんを振る舞う。
(10月)
●綾歌町のボランティアグループ「碧空会」が、綾歌郡老人ホームに入所しているお年寄りら約50人と一緒に同町の勝福寺前で交通キャンペーンを行い、ドライバーにうどんを接待。
広告本数は微増
この年に見つかったうどん関連の広告は、協賛広告と単独広告を合わせて157本。前年の112本から増えたものの、平成4年~5年頃の370本からすると、半分以下のレベルに止まっています。
<県内うどん店>
【高松市】
「さぬき麺業」(高松市松並町他)… 25本
「かな泉」(高松市大工町他)……… 24本
「さぬきうどん」(高松市栗林町他)…4本
「川福」(高松市ライオン通)…………3本
「久保製麺」(高松市番町)……………2本
「源芳」(高松市番町)…………………2本
「秀」(高松市八坂町)…………………2本
「三福」(高松市兵庫町)………………1本
「こんぴらうどん」(高松市古馬場町)1本
「さか枝」(高松市番町)………………1本
「丸川製麺」(高松市中新町)…………1本
「すゑひろ」(高松市中野町)…………1本
「松下製麺所」(高松市中野町)………1本
「田中」(高松市木太町)………………1本
「田舎人」(高松市春日町)……………1本 4月20日、太田店オープン
「花ざかり」(高松市十川東町)………1本
「更科うどん」(高松市十川西町)……1本 7月27日オープン
「得得」(高松市勅使町)………………1本
「北山うどん」(高松市鬼無町)………1本
「ヨコクラうどん」(高松市鬼無町)…1本
【東讃】
「郷屋敷」(牟礼町)……………………3本
「寒川」(三木町)………………………2本
「権平うどん」(白鳥町)………………1本
「吉本食品」(大内町)…………………1本
「しど路」(志度町)……………………1本
「六車」(白鳥町)………………………1本
「宮西製麺所」(香南町)………………1本
【中讃】
「たかや」(多度津町)…………………3本
「いきいきうどん」(坂出市京町)……3本
「まごころ」(丸亀市蓬莱町)…………1本
「サヌキ食品」(綾歌町)………………1本
「小縣家」(満濃町)……………………1本
「日の出製麺」(坂出市富士見町)……1本
「大庄屋」(琴平町)……………………1本
「麺匠房」(宇多津町)…………………1本
「いはら」(宇多津町)…………………1本
<県外うどん店>
「大阪川福」(大阪市南区)……………1本
<県内製麺会社>
「サンヨーフーズ」(坂出市西庄町)…24本
「石丸製麺」(香南町)…………………6本
「藤井製麺」(三木町)…………………3本
「日糧」(詫間町)………………………3本
「ピギー食品」(詫間町)………………2本
「七星食品」(寒川町)…………………1本
「大喜多製粉所」(宇多津町)…………1本
「だるま食品」(財田町)………………1本
「おおみね」(土庄町)…………………1本
<県内製粉会社>
「木下製粉」(坂出市高屋町)…………1本
「日讃製粉」(多度津町)………………1本
<その他うどん業界>
「加ト吉」(観音寺市観音寺町)………8本
「香川県生麺事業協同組合」……………3本
オープン広告は2本だけ
●「田舎人」太田店(高松市春日町)…4月20日オープン
●「更科うどん」(高松市十川西町)…7月27日オープン