10
夜寝んとうどん練るよ(飯山町 きんちゃん) 讃岐ではうどん問答はできぬさ(坂出市 アランドロンコ)
田尾 まずは軽いジャブから。
ごん 回文はたいてい「と」と「ど」とかは一緒にしますから、そこは目をつぶってくださいね。
田尾 もちろん、「さぬきではうどんもんどうはできぬさ」みたいに濁音まできれいに回文になっている方がポイントが高いけどね。
9
うどん食いに家内の田舎に行くんどう(高松市 川田剛士)
ごん 最後の「どう」が、無理やり付けた感があってちょっと苦しいですけど(笑)。
田尾 その「行くんどう」という物の言い方に、作者の「ちょっと友達に胸を張って自慢している感」を感じ取るんや。すると、作者のうまい讃岐うどんを食べに行くことに対する誇りのようなものが伝わってきて、なかなか気持ちのよい回文になってくる。
ごん えらい解釈しますなあ。
8
「わいな、もう関東のうどんがうもないわ」(多度津町 洲賀崎秀夫)
田尾 讃岐うどんのプライドだ。
ごん 「わい」に田舎者のニオイもしますけど。
田尾 そんなことを吹っ飛ばすほどの、讃岐うどんのプライドだ。
7
角のスタンドうどん出す。のどか。(丸亀市 英恵)
田尾 ガソリンスタンドがうどんを出してもちっとも違和感を持たれないのが讃岐うどんワールドですから。
ごん うどんを出す喫茶店とか酒屋とかスーパーもありましたからね。
田尾 うどんが食べられる自転車置き場も、うどんが食べられる化粧品店もありました。
6
任天堂がうどん店に!(三野町 TRY-X)
田尾 だからゲーム屋さんがうどん店になってもちっとも驚かないぞ(笑)。
ごん ゲーム屋さんじゃなくて、大会社です。
5
「安藤、しようよ、しりとりしよう」「よし。うどん…あ!」(綾南町 ぬるまゆ)
田尾 日常の「あるある描写」を見事にうどんで収めた回文だ。
ごん 「あるある」というより、コントネタですけどね。
4
「ゾウ君、どうしよう」「よし、うどん食うぞ」(牟礼町 冗談はエイズ)
田尾 何かええなあ。
ごん ゾウ君の相方はきっと優柔不断なネズミ君ですね。迷っているネズミ君の問いかけに、ゾウ君が「よし、うどん食うぞ」と力強く決断を下した。
田尾 二人の信頼関係まで浮かび上がってくる名作です(笑)。
3
「わしか? 特に肉とかしわ」(三木町 天野JACK)
田尾 「泉屋」の肉うどんと「はりや」のかしわざると見た。高松市のあの辺の住民の総意だ。
ごん 無理やりですけど。
2
「ものたりないな、イナリたのも」(三木町 天野JACK)
田尾 この作品が世に出て以降、香川県内でうどん屋でイナリを頼む時にこのセリフを言うやつが続出したという、明快で壮快な作品である。
ごん 確かに僕らみんな言うてましたもんね。
田尾 私など、今でもつい口に出てしまうもん(笑)。
1
須磨を出、うどん粉乗せ西へ…老舗の近藤でおます。(東京都 松田憲州)
田尾 うどん回文史に燦然と輝く、珠玉の作品だ。
ごん ま、回文史があったとは思えませんが。
田尾 これは、神戸の須磨で製粉業を営む創業数百年の老舗・近藤製粉が、九州は博多から大量のうどん粉の注文を受け、今まさに船で須磨の港を出たところである。「老舗の近藤でおます」という言葉遣いに、大商人の伝統と格式が窺えるではないか。
ごん 。ま、勝手な妄想ですけど(笑)。